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韓国語の勉強を兼ねています K-POPアイドルを中心とした音楽や芸能・映画に関する分析やレビューをぶん投げます

非ARMYが語る、BTSの魅力

 

7人の快進撃が止まらない。

9月18日の午後6時にYouTubeで発表されたBTS(防弾少年団)の新曲〝DNA〟が、MV公開の約20時間後に2000万回再生を突破した。

韓国出身歌手の中では歴代最速記録である。

 さらに彼らは、今年5月にラスベガスで開催された〝2017 Billboard Music Awards〟で、過去6年間Justin Bieberが取り続けてきたTop Social Artist賞を受賞する快挙まで成し遂げている。

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BIGBANG、2NE1、東方神起やSUPER JUNIOR、2PMにWonder Girlsー

世界各国に熱烈なファンを数多く抱え、これまでK-POPの歴史の礎を築いてきたレジェンドたち。

その多くは皆〝御三家〟であるYG・SM・JYPに所属しているケースがほとんどだった。

しかし、BTS(以下バンタン)はそうではない。

それらのうちどの音楽事務所にも所属せず、これほどの偉業を達成したK-POP歌手の例は、過去に1度もなかっただろう。

なぜ彼らはこんにち、韓国を代表するほどのビッグスターとなり得たのだろうか。

例によって例のごとく、私の主観に基づいた分析を行っていこうと思う。

 

 

栄光へのプロローグ〝青春三部作〟の成功

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2015年春。

これまでの〝学校三部作〟では見ることのできなかった青春の痛みや美しさ、儚さをコンセプトに作られた〝青春三部作〟の「花様年華シリーズ」が開始され、タイトル曲〝I NEED U〟が公開された。

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このMVはなんと、アイドルの楽曲にあるまじき年齢指定コンテンツ

メンバーが容赦なくリンチされたり、殺人を犯したり、集団自殺を匂わせる描写が施されていたり…と、なかなか過激な作品に仕上がっている。

しかし、そんな荒々しさの中に散りばめられたなんとも言えない青春の心苦しさ、未熟で甘美な少年たちの色気に、人々ははっと息を飲んだ。

周りの大人や社会に中指を立て、ヘイトを溜め続けた、ヒップホップ仕込みの悪ガキたち。

その内に秘めていたものが、こんなにもデリケートで上品な美しさだったとはー。

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もともと〝No More Dream〟や〝Danger〟などの楽曲で、ジャンキーでアングラ感満載の典型的なB-BOYスタイル、というイメージが強かった彼ら。

だが窮屈な制服をひとたび脱ぎ捨てると、現れたのはガラスのように脆く透明な、少年たち本来の姿。

人生の中で最も美しい瞬間、花様年華

この画期的な題材のシリーズ化、そしてその成功こそが、当時のバンタンを大勢(テセ)ドルに引き上げる最初の一手だったのではないかと思う。

 

 

「アーティスト」と「アイドル」の完全両立

青春三部作は花様年華のPt1・Pt2に続き、翌年5月に発売されたアルバム〝Young forever〟で完結となった。

しかしバンタンの勢いは衰えるどころか、正規2集の〝WINGS〟でさらなる飛躍を見せる。

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なんと1人1曲、全7曲のソロ楽曲が収録されているというのだ。

BIGBANGをロールモデルに掲げて始動したというこのグループは、デビュー3年目にしてもうすでに、彼らの域に足を踏み入れようとしているのではないかー

当時私は本気でそう思った。

楽曲制作に携わるアイドルは、多くはないが一定数いる。

しかしそれが1つのグループのうちの全員というのは、ほぼ奇跡に近いだろう。

 

そして同年10月10日に発表されたタイトル曲〝피 땀 눈물 (Blood Sweat & Tears)〟は、自身最高の1曲となった。

ついさっきまで7人のアーティスト集団だったかと思えば、今回は紛れもなく「アイドルグループ」としての為せる業である。

MV再生回数から音楽番組1位獲得数まで、これまでの自己記録を次々と塗り替える快挙となり、YouTubeでの再生回数はおよそ2億回。

アルバムは発売と同時に、アメリカやカナダ、シンガポールノルウェーなど、約23カ国でのitunes総合チャートで1位を獲得した。

 また年末授賞式では、MMAでの「今年のアルバム賞」、MAMAでの「今年のアーティスト賞」をはじめ、数々の賞を総なめにした。

アジアが、そして世界が、彼らを真のカリスマと認めた輝かしい瞬間だった。

 

自身の魅力を活かした楽曲制作に励み、最高のパフォーマンスを生み出すアーティストとしての姿。

そして、事務所から与えられた理想的なコンセプトを完全に消化し、多くのファンの心をしっかりと捉えるアイドルとしての姿。

このようにバンタンには、その2つの姿を見事に使いこなす器量と根性が全員に兼ね備えられているのだ。

 

 

ワールドワイドに愛されうる音楽スタイルの確立

以下は、ある海外記者が彼らの魅力についてのインタビューに答えた記事である。 

Billboardコラムニストが語る“防弾少年団のアメリカでの成功の秘訣” - UNIVERSAL MUSIC JAPAN

本文の一部を少し取り上げてみよう。

―今回のツアーでは、南米・北米を合わせて9公演14万人を動員。BTSの魅力はどこにあると思いますか?

コンセプトやリアルな歌詞に徹底的に拘っているところと、パフォーマンスのカリスマ性ではないでしょうか。

BTSは初めから自らをK-pop界の反逆者(rebel)として位置付けていて、他のアーティストが滅多に触れないような題材について歌っていましたし、まだ韓国で人気が出る前の様々な最先端の音楽スタイルを他のアーティストに先駆けて採り入れていました。

それと審美的に美しいミュージック・ビデオとが相まって、K-popの通常の枠を超えているのだと思います。

 彼らがアジアのみならず、アメリカやカナダなどの欧米諸国でもその名を轟かせた理由が、ここではっきりと確信できる。

世界の音楽ファンをターゲットに活動を行う傾向が強いK-POPアイドルは、その楽曲のテイストを海外の人気曲に倣って制作するケースが多い。

すると、アイドルの個性よりも曲のインパクトが勝ってしまうことがある。

「確かに流行りの曲ではあるけど、だったら最初から海外のメジャーアーティストを聴けばいいや」ということになりかねないのだ。

アンチたちはそんな現象を「結局K-POPは洋楽の二番煎じに過ぎない」と嘲笑う。

しかし、そんな〝負〟の要素の確立をぎとめ、自分たちの音楽と価値をき出し、守り抜くー

バンタンにはそれが可能だった。

先述の楽曲は、海外で流行している「ムーンバートン(Moombathon)」というEDMジャンルをいち早く取り入れた斬新なテイストと、K-POPならではのミステリアスで美しいMVの融合が話題を呼んだと言える。

バンタンはただ洋楽の手本に倣うだけではなく、そこに自分たちなりの魅力や個性を乗せて届けることができるのだ。

これには彼らをデビュー当初から支える敏腕プロデューサーたちの尽力があるが、その詳細についてはまた後日紹介しようと思う。

 

さて、ここまで3つの観点からバンタンの魅力を紐解いてみた。

ちなみに私はARMYではない。

しかし、無名事務所から一気に世界的スターに上り詰めたシンデレラストーリー的経歴と、デビュー以来の一貫した少年コンセプトの完成度の高さに感銘を受けた1人ではある。

この先どれほどの力を発揮し続け、どのように進撃を続けていくのか。

21世紀の音楽史に大きく名を刻んだ7人の革命戦士に、今後も目が離せない。

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